『硫黄島からの手紙』

階級の違う2人の主役が、勝ち目のない戦いの中、どう生きようとしたか、どう死のうとしたかが納得のいく流れの中で描かれている。戦闘を指揮する栗林中将はアメリカ留学の経験があるエリート。家庭にあっても良い人を思わせる。戦場でも、部下に威厳を見せつけることもない。そして硫黄島を1日でも長く守る事が本土すなわち日本国民を守ることになるという、決死の覚悟を決めている。

一方、下級兵の西郷は職を奪われ、身重の妻を置いて出征した事もあり、斜に構え、時に皮肉を込めた目で戦場を眺めている。彼は小さな縁(運)で栗林中将を知り、3度助けられる。戦闘が厳しくなるにつれ、彼の皮肉な目は生き延びる必死の目と変わっていく。

戦争にあって、栗林中将の出来すぎた人柄や軍人らしくない一面に、だから望みのない戦地に送られたのか、という伏線も感じる。渡辺謙は、近代的な思考と天皇至上と軍人としての行動パターンをきっちり見せてくれた気がする。

西郷役の二宮和也は、線が細く、強くもなく、戦時中庶民が抱えたであろう諸所の要素をすねた目とともに良く演じていたと思う。また、憲兵隊からはみ出した清水役の加瀬亮の存在がピリッとスパイスを効かせている。西郷の現実的な苦悩とは違って、清水のそれは本質的に当時にとけ込めない自分自身への苦悩のように見える。生きることに執着するが、こんな事もあっただろうという辛い最後を遂げる。

(新宿 ミラノ1)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次