『柔らかな頬』

不倫相手の別荘に家族で訪れ、娘の失踪という運命を背負ったカスミ。どうにも諦めきれず、執拗に探し続ける彼女の前に、末期ガンで余命幾ばくもない内海が現れる。死ぬ前に子ども探しを手伝うという彼。カスミの運命と自分の運命を重ね、他の誰からも救われない自分たちを互いに支え合いながら、すでに口実となっているかもしれない子ども探しを続けていく。

カスミという存在は独特だが、苦しみを持つ人のデフォルメされた生のようにも思えた。どっちを向いても救いようのない、出口の見えない苦しみを持つ人間の、とことん突き詰めた先の再生を予感させる。

(桐野 夏生著)

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