『時生』

難病を背負った息子(時生)の終焉間際、父親の回想で始まる物語。若き日、短気な性格や出自を恨む心から、中途半端な生き方をしていた拓実(父親)の元に、ナゾの青年が現れる。青年トキオは、予言者のような事も言うが、概して真面目な言葉で拓実を気遣う。

拓実は恋人の失踪などから事件に巻き込まれるが、欲も得もなく頑張り抜く。次第に自分の出自のナゾも見えてきて、心穏やかに実母との再会を果たすに至る。拓実の立ち直りを見とどけるように、青年トキオは将来の妻麗子とのきっかけを作り消えていく。青年トキオが何度か言う「生まれてきて良かった」は、実は難病の息子の言葉であり、彼は時を越えて父親に伝えに来たのだ。

そして、父親は最後の時、「花やしきで待っているぞ」と、出会った場所を呟き、確かに会ったことを確かめるのだった。

物言えぬ愛する者がいたら、やはりこんな物語の中で出会い、言葉を受けたいと思うだろう。

(東野 圭吾著)

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