静かな迫力が全体を包み、その緊迫した時代に引きずり込まれた。激しい映像は全くないのに、映画全体を緊張感が貫き、無謀な社会に生きる真っ当な精神の苦しみを感じた。
ヒトラー政府への反体制組織「白バラ」のメンバーであるゾフィーは、反政府・反戦ビラを大学構内に配っているところを逮捕される。仲間の反対を押して構内に配る事にした兄共々、尋問を受ける。取調官モーアに無実を主張したゾフィーだが、兄の自白で一点、実行犯であると認める。激しく言葉をやり取りするゾフィーとモーア。次第にかすかな敬意を示すモーアだが、ゾフィーは真っ直ぐに主張を貫き、裁判となる。罪をがなり立てる裁判官に静かに強く意志を示す兄妹の姿が、時代の悪さを更に感じさせる。死刑の判決を受け、99日間あるはずの猶予を認められず、即日処刑されると知ったゾフィーの驚きとおののき。それでも両親との最後の対面を静かに迎え、処刑所に向かう。極限の場でも、兄や仲間を売ったり、恨んだりする事のないゾフィー。その曇りのない精神が痛々しい。
ラジオから流れる音楽に合わせ、友達とクスクス笑いながら歌うゾフィー。戦場の恋人を思うゾフィー。善良な両親に愛されて育った様子など、映画の中にちりばめられた温かいモノが余計にゾフィーの決然として姿を美しいものにしている。
(新宿 武蔵野館)
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